自然と暮らす まほなび
◇日本古来の印傳技法に魅かれ、独学で習得、奈良時代や江戸期の作品を再現
○/印傳工房 南都 代表 南浦 太市郎さん(現代の名工/H28)
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2005 印傳工房 南都 代表 南浦 太市郎さん(現代の名工/H28)
2005 印傳工房 南都 代表 南浦 太市郎さん(現代の名工/H28)
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2005 印傳工房 南都 代表 南浦 太市郎さん(現代の名工/H28)
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 鹿皮に染色を施し、漆などで模様を描いて財布やバッグに仕立てられ、日本の伝統工芸品とされる印傳。だが「それらは、昭和に入って作られて印傳の代名詞みたいになっているけど、それは違う」と言い切るのは、宇陀市菟田野で、「奈良印傳」の復活に精魂を傾けている「印傳工房 南都」の南浦太市郎さんだ。「日本古来のものは、燻しと染め抜き技法なのですよ」

 南浦さんは、化学研究所で分析の仕事をしていたが、24、25歳の頃から、皮革染色工芸の仕事で生計を立てる道に入った。軽くやわらかくて使い込むほどに手になじみ質感を増す印傳は、戦国時代には甲冑・刀などの武具に、江戸期には武士や商人の小物入れなどに男の粋と洒落のため贅が尽くされたという。

 鹿革で印傳素材の製造を手掛けるうちに、自らも当時の印傳製品を収集してはその技術の高さに感嘆し、また掘り出し物を探す、を繰り返すことになった。

「あの風合いを残した染色技法は?」と、煙で革を染める「燻し(いぶし・ふすべ)技法」を試行錯誤。工房に陣取る特注木製ドラムに糊や糸で文様を施した鹿革を張り、竈で燃す稲わらの煙の量で変わる色づきを確認しながらスピードを調整して回す。「ガラッ、ガラ、ガラッ」。もうもうたる燻煙の中での過酷な仕事、これという色に燻し終えるのに3日かかることもあり、目も鼻も喉もやられる。

「しんどくない仕事なんてありますか」と南浦さん。手間暇と体力はかかるが、温度や湿度、煙の立ち方の違いによる微妙な変化が、独特の風合いを生むという。

正倉院や東大寺に奈良時代の作として残っている品々の、天平の工人たちが作り上げた技を再現していく中で修得した燻し技法が、平安時代の法令集『延喜式』の記述で確信でき、より高みへと技を磨いた。同時に、刀剣や武具の生産が盛んだった奈良こそが印傳発祥の地とする信念を持つに至った。
 東大寺に残る『葡萄唐草文染葦』(漆皮箱の袱紗)の模様や正倉院の宝物など数々の複製に取り組み、その業績が評価され2016年、厚生労働省が卓越した技能者と認める「現代の名工」に選ばれた。

 より多くの人に印傳の魅力を伝えたいと2014年、工房横に設けた展示スペースでは、数多くの秀逸印傳コレクションのほか、自作の燻し染めや染め抜きの印傳、昭和になって流行した漆で吉祥柄模様や長女の田中由香里さん(奈良県現代の名工/令和元年)オリジナル柄を捺染した財布や定期入れなどの小物も展示販売。妻の康子さんと長男の崇将さん夫婦ら家族総出で家業を回す。

 出来不出来に大きく関わる鹿革素材の仕分けから加工・仕上げまで全工程を手がけられるのは南浦さん一人だけ。奈良古来の伝統工芸の火を絶やしたくないと願うが、家族に跡を継げとは言ったことがなく、技法も敢えて教えない。

 主に染めと営業担当の崇将さんは、「確かに。でもここまでにした奈良の伝統工芸を父の代で終わらせたくないと思いました。販路も重要なので、まずは営業の勉強をしました。そして父にしかできない仕分けの力を学びたい」と、一子相伝の道を歩む決意を示した。

「古来の技法には鶉染めや粉込などまだ再現できないものがある。一つひとつ解明していきたい。新たなものを目指すのではなく”温故知新“、時代を溯って現代の商品としてよみがえらせたい」と言い、同時に「持ち手の人生の一部分になるようなクオリティーの高いものを作っていきたい」と、さらなる高みに挑む心意気を見せてくれた。
2005 印傳工房 南都 代表 南浦 太市郎さん(現代の名工/H28)
印傳工房 南都 代表 南浦 太市郎さん(現代の名工/H28)/MINAMIURA TAICHIRO
1952年、宇陀市生まれ。化学研究の会社で働いていたが、25歳頃、皮革染色工芸の道に就く。「奈良印傳」の古技法を独学で再現し、奈良期や江戸期の秀逸印傳の複製に取り組んでいる。2000年「印傳工房 南都」を立ち上げ、2016年「現代の名工」に選ばれる。

※現代の名工:卓越した技能者表彰制度に基づき、厚生労働大臣によって表彰された卓越した技能者(卓越技能者)
印傳工房 南都
TEL:0745-84-3766
住所:宇陀市菟田野古市場432
営/9:00〜17:00
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/酉越左官 一級左官技能士 酉越 仁さん
/印傳工房 南都 代表 南浦 太市郎さん(現代の名工/H28)
/和紅茶専門店「大仏汽茶」運営 Artsplaza(アーツプラザ株式会社) 古屋 研一郎さん
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/奈良町からくりおもちゃ館 館長 安田 真紀子さん
/奈良交通株式会社 自動車事業本部 乗合自動車部 運行受託グループ 統括指導員上條 正幸さん(ユンケル上條)
/地域おこし協力隊 下西 勇輝さん
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/きりかぶの里 代表 山崎 美重子さん
/散華美術館 館長 原田 千賀子さん
/金井畜産 代表 金井啓作さん
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/大和高原文化の会 会長 浦久保 昌宣さん
/ふくもと畳店 4代目 福本 亮さん
/山野草の里づくりの会 村上 秀夫さん
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/ならまちの引き売り 染井 大さん
/カフェ ねころん 経営 前川郁子さん
/子どもの自然の遊び場 彩雲ひろば 主宰 新井博子さん
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/蔵じまいの危機から再生、 “大和の酒”造りに挑む7代目
/農家民宿 ほったらかし家 ボランティア団体「しもまる」会員 西岡千種さん
/自給倶楽部「華坊主の里」 沢井啓祐さん 三家昌興さん 松本陽一さん
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/自然派農場しもかわ 主宰 下川 麻紀さん
/ドールハウス・ミニチュア作家 シック・スカート(植田 定信)さん
/竹アーティスト/「竹の國」代表 三橋 玄さん
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/ふくさきわう代表 的場ふくさん
/奈良民俗文化研究所 代表 鹿谷勲さん
/通訳・翻訳・ライター 川上村地域おこし協力隊員 エリック・マタレーゼさん
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/NPO法人無形文化継承機構 福住S・ジョブズ・スクール理事長 前嶋文典さん
/とようけのもり 女将 野田 知江さん
/歴史研究家 長田光男さん
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/NPO法人 メディアネット宇陀 副理事長 稗田 睦子さん
/高山茶筌 翠竹園 伝統工芸士 稲田 有節 さん
/井上 加代 さん
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合同会社 ほうせき箱 代表/平井 宗助 さん
農業家/松浦 猛さん
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古代日本茜染研究所/宮崎 明子 さん
切り絵作家/石賀 直之 さん
河内・江州音頭倶楽部 奈良躍遊会/高岡 伸和 さん
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奈良・人と自然の会/森 英雄 さん
めだか街道/枡田 秀美 さん
映像作家/保山 耕一 さん
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奈良県立医科大学 名誉教授/大𥔎 茂芳 さん
TANTANAKUY 井上工房/井上 暁 さん
竹細工職人/浦嶋 正幸 さん
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有限会社津田瑞苑/津田 和佳 さん&祥乃 さん
曽爾村役場企画課 曽爾村農林業公社事務局/髙松 和弘 さん
農家のお米屋おおの/大野 收一郎 さん
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人形作家/岡本 道康 さん
相楽木綿(さがなかもめん)伝承館代表/福岡 佐江子 さん
前鬼宿坊 小仲坊 61代目/五鬼助 義之さん 三津子さん
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