自然と暮らす まほなび
◇藍とともに生きていく
○/井上 加代 さん
makican
1801_笠間藍染4代目 井上 加代 さん
1801_笠間藍染4代目 井上 加代 さん
1801_笠間藍染4代目 井上 加代 さん
1801_笠間藍染4代目 井上 加代 さん
1801_笠間藍染4代目 井上 加代 さん
1801_笠間藍染4代目 井上 加代 さん
1801_笠間藍染4代目 井上 加代 さん
1801_笠間藍染4代目 井上 加代 さん
1801_笠間藍染4代目 井上 加代 さん
1801_笠間藍染4代目 井上 加代 さん
1801_笠間藍染4代目 井上 加代 さん
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 濃淡の青が美しい藍染。古くは万葉集にも登場する藍だが、盛んになったのは江戸時代と言われる。この室生・笠間地区でも数軒あったが今は井上さんたった1軒のみ。約140年続く伝統的な「笠間藍染」を受け継ぐ4代目が、井上加代さんだ。
「藍は私の子どものような存在です。元気に発酵しているといい色が出ますが、イライラしたり愚痴を言ったりするとまったく染まらない。私の言うことを理解しているんでしょうかね」。
 天然の藍で染める「笠間藍染」は、藍の葉を乾燥させ、積み上げて発酵させた藍玉(スクモ)に、石灰や小麦粉、水などを藍がめで混ぜて自然発酵させ、染めていく。
 一つのかめで染めるのではなく、いくつものかめをくぐらせて独特の色を出していく。弱ったかめも薄い色を出すときに活躍するのだが、最後はまったく染まらなくなって命を終える。ゆえにかめの様子を常にチェックして手を入れる。深さ約1?の藍がめが床下にいくつも並んでいて、菌が死なないように夏場は毎日、冬場は2日に1回必ず撹拌する。温度や湿度にも気を使い、冬は床下に毎日もみ殻と炭を入れて保温する。ゆえに一日たりとも休みがない。
 工房は明治初期に建てられた家の一室。あちこち傷んでいるのだが、菌が住みついているこの部屋に手を入れることはできず、補修しながら今も使っている。冬場の寒さは容赦なく、何度も洗う井戸水も凍りつくほどだが、菌のために暖房は入れられず自然に身を置くしか術がない。
「まさか自分が藍染をするとは思っても みなかった」と笑う加代さん。加代さん が藍染に関わったのは15年前のことだ。加代さんは井上家に嫁いだお嫁さんで、義父の富夫さんは「笠間藍染」伝統工芸士として知られていたが、夫で長男の二能さんは会社勤めをしていて、まだ継ぐのは当分先と考えていた。加代さん自身も生まれつき股関節が悪く、家で和裁の仕事をしていた。
 だが、毎日藍染に取り組む義父の姿を見て、思いや情熱に触れるうちに「今誰かが伝承しておかなければ代々の菌が途絶えてしまう」と思い始め、とりあえず自分が引き継いでゆくゆくは夫に伝えようと決意した。次の日から義父について一から学んでいった。
「ノートを取るな。目で見て覚えろ」が義父の口ぐせ。経験を重ねるうちにそれがわかった。発酵具合や菌の具合、染まり方などは常に変化する。丹念に様子を観察することで覚えていくしかない。
 ところが2年後、義父は病に倒れて亡くなってしまう。そんなときに限って、かき混ぜても藍が元気にならない。「あー、これで菌が全部死んでしまったら私が伝統工芸をつぶしてしまう」。あわてて藍の本場、徳島まで車を飛ばし、教えを請いに行った。死なせてしまったらどうしようと気が気でなかった。
 失敗は数限りない。そのたびに悩み、試したり、聞いたりして乗り越えてきた。6年前に、『笠間藍染』が奈良県伝統工芸品に認定。今は義父とは違うデザインに挑戦したり、女性ならではのスカーフやストールといった商品も増やし、好評を得ているが、今も「毎日が挑戦」と話す。

 染の柄となる版木は、代々使ってきた伊勢型紙。米ぬかと米粉を混ぜたのりを一枚一枚丁寧に塗って、型をうつす。使い続けて型紙が老朽化しているのも悩みの種だ。だが、挑戦したいのは、大切に残してきた明治初期の型紙。同じ模様が一面に広がっているものなど、和モダンな柄が加代さんのお気に入りだ。

「まだまだお義父さんには近づけません。でも化学繊維には出せない天然の藍染めの風合いや、一つとして同じものがない特徴を、もっと多くの方に知っていただきたいです。今は夫も手伝ってくれますので、二人三脚でこれからも笠間藍染を守っていきます」
1801_笠間藍染4代目 井上 加代 さん
KAYO INOUE
1954年奈良県大宇陀生まれ。2002年から笠間藍染に取り組む。2012年奈良県伝統工芸品に認定される。
工房でハンカチの藍染体験
10人以内、材料費込みで1人2,000円(要予約)
場所/宇陀市室生下笠間620
問申/☎0745-92-3607
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/酉越左官 一級左官技能士 酉越 仁さん
/印傳工房 南都 代表 南浦 太市郎さん(現代の名工/H28)
/和紅茶専門店「大仏汽茶」運営 Artsplaza(アーツプラザ株式会社) 古屋 研一郎さん
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/奈良町からくりおもちゃ館 館長 安田 真紀子さん
/奈良交通株式会社 自動車事業本部 乗合自動車部 運行受託グループ 統括指導員上條 正幸さん(ユンケル上條)
/地域おこし協力隊 下西 勇輝さん
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/きりかぶの里 代表 山崎 美重子さん
/散華美術館 館長 原田 千賀子さん
/金井畜産 代表 金井啓作さん
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/大和高原文化の会 会長 浦久保 昌宣さん
/ふくもと畳店 4代目 福本 亮さん
/山野草の里づくりの会 村上 秀夫さん
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/ならまちの引き売り 染井 大さん
/カフェ ねころん 経営 前川郁子さん
/子どもの自然の遊び場 彩雲ひろば 主宰 新井博子さん
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/蔵じまいの危機から再生、 “大和の酒”造りに挑む7代目
/農家民宿 ほったらかし家 ボランティア団体「しもまる」会員 西岡千種さん
/自給倶楽部「華坊主の里」 沢井啓祐さん 三家昌興さん 松本陽一さん
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/自然派農場しもかわ 主宰 下川 麻紀さん
/ドールハウス・ミニチュア作家 シック・スカート(植田 定信)さん
/竹アーティスト/「竹の國」代表 三橋 玄さん
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/ふくさきわう代表 的場ふくさん
/奈良民俗文化研究所 代表 鹿谷勲さん
/通訳・翻訳・ライター 川上村地域おこし協力隊員 エリック・マタレーゼさん
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/NPO法人無形文化継承機構 福住S・ジョブズ・スクール理事長 前嶋文典さん
/とようけのもり 女将 野田 知江さん
/歴史研究家 長田光男さん
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/NPO法人 メディアネット宇陀 副理事長 稗田 睦子さん
/高山茶筌 翠竹園 伝統工芸士 稲田 有節 さん
/井上 加代 さん
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合同会社 ほうせき箱 代表/平井 宗助 さん
農業家/松浦 猛さん
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古代日本茜染研究所/宮崎 明子 さん
切り絵作家/石賀 直之 さん
河内・江州音頭倶楽部 奈良躍遊会/高岡 伸和 さん
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奈良・人と自然の会/森 英雄 さん
めだか街道/枡田 秀美 さん
映像作家/保山 耕一 さん
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奈良県立医科大学 名誉教授/大𥔎 茂芳 さん
TANTANAKUY 井上工房/井上 暁 さん
竹細工職人/浦嶋 正幸 さん
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有限会社津田瑞苑/津田 和佳 さん&祥乃 さん
曽爾村役場企画課 曽爾村農林業公社事務局/髙松 和弘 さん
農家のお米屋おおの/大野 收一郎 さん
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人形作家/岡本 道康 さん
相楽木綿(さがなかもめん)伝承館代表/福岡 佐江子 さん
前鬼宿坊 小仲坊 61代目/五鬼助 義之さん 三津子さん
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