東京都八王子市出身の雅典さんは、2002年から3年間、中南米を旅行中にマクラメを知り、帰国後天然石と組み合わせた作品作りを開始。07年に希さんと結婚、長男誕生を機に15年3月、天川村へ移住。
「山や川に囲まれた自然の中で子育てをしたい」と2015年3月、天川村に移住、生業のマクラメ天然石アクセサリー作りに励みながら、田舎暮らしを楽しんでいるのは、高木雅典さん一家。
雅典さんは八王子市出身。2002年から3年間、中南米を旅行し、現地で伝統的に受け継がれる石や木と紐を組み合わせて作る装飾アクセサリー「マクラメ編み」の魅力にはまった。原住民に教わっては作って”道売り“しながら南下。
「本にも載っていないような情報をたくさんもらいました。一見すごい風采の人たちでしたが、話すと人間味あふれていてそれが衝撃でした」
帰国後、カフェで働きながら、天然石と組み合わせた創作に励んだ。帰国直前のメキシコで出会った妻の希さん(静岡出身)と2007年に結婚、希さんも雅典さんを手伝おうと、石や染めのことを勉強し、ネックレスや指輪などのデザインを考案。
3・11がきっかけで住まい探しを始め、13年、まずは京都の嵐山へ。翌年8月、長男玄真ちゃん誕生を機に、「子育ては自然の懐でおおらかに」と、九州、岡山、淡路などの田舎を探し歩いた。「どこもきれいでとてもいいんですけど、ピンと来るところがなかった」。2015年1月、明日香を訪ねた折、せっかくだからと吉野山、黒滝を訪ね、さらに足を延ばして2泊3日した天川村で「ココだ!」と。決め手は、冬のピーンと張りつめた空気と静けさと人の温かさだった。
「静かなところで自分たちのペースでものづくりに励める」と、物件探しを始め、同年3月、木造2階建て築70年の空き家を借りて転居した。
裏山では豊富な水が湧き、家庭菜園ができる畑があり、周囲には草木染に必要な素材があふれていた。畑で藍を栽培、麻糸を染めた。ヨモギやアカネ、セイタカアワダチソウ、椿、ヤシャブシ、柿渋など、いろいろな草木が深みあるカラフルな発色をする。
その糸で雅典さんは、父親が八王子で磨く石を組み、オリジナルの作業板・タブレロで編み上げていく。販売は、希さんの兄が運営するインターネットサイト「ARTEMANO」やワークショップ&展示会で。購入者の中には、その作品のホームグラウンドを訪ねてみたいという人もあり、「ここでのワークショップも企画中です」とのこと。
村内の移住者仲間との交流も徐々に増え、玄真ちゃんは、地域の皆に”お宝“みたいにかわいがられる。「先日も僕たち二人が地域の集まりで会食している間、区長夫人が添い寝してくださってました」と、この村この家での家族の営みが楽しくてたまらない様子。
アクセサリーを単に見た目だけのものではなく、その人にとっていい風が流れるきっかけになるものだと考える夫妻、「ものづくりを通して大切なこととそうでないことなど、自分たちの生き方が見えてきます。ここでの暮らしを享受しながら作品に向き合い、今ある自然を後世に残すことの大切さ、天川村の草木や風の色、空気の匂い、それらを作品に編み込んで村の魅力を発信していきたい」と。