煮ても炒めてもさくさくパリパリな革新的レタス『サラノバレタス』を栽培する農園が曽爾村にある。山浦康二さんが運営する山浦農園だ。
サラノバレタスは、オランダ種苗会社ライク・ズワーンが20年近くかけて品種開発した画期的なリーフレタスで、ライセンス契約を結ばなくては栽培できない。山浦農園は、国内13の栽培拠点の中でも、土耕栽培で8種類を栽培する数少ない農園だ。
その代表・山浦康二さんは、前職の節句人形の販売・製造の営業に励みながらも、業界の先行きに不安を感じて離職、33歳のとき実家の農業を継いだ。減農薬・有機栽培の循環型農業に取り組み、44歳のとき奈良県エコファーマーに認定される。
しかし「従来のような農協出荷では、どんなにこだわって作っても、他人に値を付けられ、その他大勢の中の一野菜でしかない。だから後継者も減る」。営業マン時代にファイナンシャルプランナーの勉強をしていた山浦さん、「どこにもまねされない商品、自分しか作れない野菜」というオンリーワンが必要と考えた。
そして種苗展示会巡りをする中、平成18年、サラノバレタスと出遭う。「既存のレタスにはない際立つ個性に可能性を感じました」
しかし、栽培には「地域限定1農家、有機農業的な栽培を行っていること」などの制約と法人としてのライセンス契約が必要。第一関門の農業環境は突破したが、難関は「法人」。手だてを探って東奔西走、ライク社と1年がかりで交渉し、友人たちと組むことで何とか認定にこぎつけた。
平成19年から細々と作り始め、購入者の反応を見て22年から本格栽培へ。こだわりを認めてもらうため、早朝・夜に農作業をして、昼間は商談会や展示会など販路開拓に駆けずり回った。
平成24年1月の農業研修後、たまたま隣室で地産地消を目指す奈良県の会議に参加していた奈良市のフレンチシェフY氏と出会う。そのY氏が「これいいやん。ドレッシングと和えてもへたれんで、見栄えも味も良くて……」と。シェフ仲間に広めてくれたり、県のキッチンカープロジェクトに取り上げてくれたりもした。
「サラノバとの出会いで、農業を変えるきっかけをもらいました」。利用者の語ってくれるレタスの特長を武器に、さらに販路を求めて日々全国を行脚中だ。人任せではなく自分で売る農業、即ち”農業からの脱皮=会社組織“と表現し、「若者が就農しやすいモデルケースになりたい」と願う。
栽培も営業も山浦さん1人でやっている今は、営業に時間を取られれば種まきの時間もなく、生産は追いつかないというジレンマに陥る。だが「苦労だとは思いません。当然のことです。頑張った分だけ売り上げに結びつく」と、どこまでも明るい。
一方で、「ホテルやレストランから客評もいいとは聞くのですが、誰が作ったレタスかまでは知ってもらえない。百貨店に置いてもらって、僕のレタスとして売り出したい」と。”山浦農園のサラノバレタス、サラノバレタスの山浦農園“となり、それは”風光明媚な大自然が広がる曽爾村にある“と知れ渡る日が来るのを確信して、今日も汗を流し続ける。