宝山寺とともに『美しい日本の歴史的風土100選』に選ばれた生駒山。神社仏閣、暗越奈良街道の街並みと棚田等の里山の風景が評価された。
棚田広がる生駒市西畑地区もこの一角にあり、その風景を守ろうと、山を手入れし汗する人々がいる。ボランティア団体『いこま棚田クラブ』の人たちだ。活動は週1回、大阪や奈良市など都市部の参加者が多く、電車を乗り継ぎ通っている。「ここは僕たちの遊び場。草を刈るのも、山の整備も楽しみながらやっていますから」と代表の出口育宏さん。
出口さんは奈良市西大寺在住。定年前に転勤してきた奈良で、平城宮跡周辺の緑や鳥のさえずりに癒された。その後、自然環境や植物生態系等を学ぶため大阪のNPO法人シニア自然大学へ。卒業後「生駒の西畑町で景観ボランティアを探している」と聞き心動かされた。高齢化の進む西畑町では、手入れが行き届かず休耕田が増え、2メートルにも及ぶ雑草に覆われていた。20世帯の地元住民が立ち上がり『棚田を守る会(東野恭己代表)』を結成したのだが、それぞれの田畑もあり大変な労力だった。出口さんはシニア自然大学の仲間15人と『いこま棚田クラブ』を結成し『棚田を守る会』と協働で活動を始めた。「はじめはいつまで続くだろうと思っていましたが、もう9年。ほんとにきれいになった」と両代表。ここの棚田は生駒石を積み上げた石垣でできている。「これも魅力の一つ。こうやって草を刈って石垣が見えてきたときはうれしかった」
地道な作業を続け今では会員数70人、内約30人が毎回参加。時には大学生や子どもたちも加わり活動の幅も広がりをみせている。奈良県の委嘱を受けての里山の整備は遊歩道を作り、子どもたちの里山体験の場としたり、休耕田ではならコープと共同で「菜の花エコプロジェクト」に取り組んだり。また、『棚田を守る会』と共同で梅の木を植え、ソバや大豆の栽培をし、美しい花畑は景観としても四季折々に楽しめるようにしている。
活動は、棚田保全のほかに、会員自らしたいことをするというスタイルで、花畑を作る人、ビオトープを作り水生生物を観察する人、畑で野菜を作る人など様々。「ずっと都会で40年間技術者だった僕が、地元の方やクラブの仲間と汗を流せることが本当にうれしい、自分たちが楽しんでいるから9年も続いているんですよね」。様々な人に守られてきた棚田に、今日も小さな花が咲く。